流産で立ち直れないとき。責めなくていい理由とふたりの過ごし方
流産のあと、「立ち直れない」と感じるのは、おかしなことでも弱いことでもありません。大切な命を失った悲しみは、自然な反応です。立ち直る早さに決まりはなく、早く元気にならなければと急ぐ必要もありません。そして、流産の多くは、あなたの行動や気持ちが原因で起きたものではありません。
食事も眠りも仕事も手につかない。ふとした瞬間に涙が出る。自分を責める考えが止まらない。パートナーとも、うまく話せない。そんな毎日の中でこの記事にたどり着いたのだと思います。ここでは、流産後の気持ちの動き方、自分を責めなくてよい理由、ふたりで過ごすときのヒント、仕事に戻るときの考え方、相談先を、公的な情報をもとにまとめました。読めるところだけ、少しずつ読んでください。
この記事でわかること
- 流産後の気持ち(グリーフ)が「立ち直れない」ほど重く感じられるのは自然なこと
- 流産の頻度と主な原因、自分を責めなくてよい理由
- 夫婦で悲しみ方が違うときの、ふたりの過ごし方と話し方の例
- 流産後に仕事へ戻るときの考え方と、使える休みの仕組み
- ひとりで抱えないための相談先と、いますぐ助けが必要なときの窓口
流産後の気持ち:「立ち直れない」と感じるのは自然なこと
流産のあとの気持ちは、悲しみだけでなく、さまざまな感情が重なって動きます。その動きには「こうなるはず」という決まった形はありません。
流産後の気持ちは「グリーフ(悲嘆)」と呼ばれる反応
大切な人やものを失ったときに起きる、心や体の反応を「グリーフ(悲嘆)」といいます。こども家庭庁のページでは、流産・死産を含む「こどもとの死別」は、近親者との死別の中でも特に悲嘆が強いとされていると説明されています。
つまり、「立ち直れない」と感じるほどつらいのは、それだけ大きな喪失だったということです。週数が早くても、短い期間でも、赤ちゃんを迎える気持ちや未来を思い描いていたなら、悲しみが大きいのは当然です。
グリーフは、次のような形で現れることがあります。
- 涙が止まらない、あるいは涙が出ずにぼんやりしてしまう
- 眠れない、食欲がない、反対に食べすぎてしまう
- 妊婦さんや赤ちゃんを見るのがつらい
- 自分を責める、怒りや嫉妬のような気持ちが出てくる
- 何も感じない、現実感がない
どれも、心が大きな出来事を受け止めようとしている途中の反応として知られています。
立ち直るまでの時間は人それぞれ
厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」でも、流産・死産の悲しみで気分が落ち込むのは自然な反応であると案内されています。からだの回復と心の回復は、同じ速さでは進みません。からだが落ち着いても、心はまだ追いついていないことがあります。
「もう何週間もたつのに」「周りはもう普通にしているのに」と、比べて焦る必要はありません。波があって、よい日の翌日に急につらくなる日があるのも、よくあることです。何年かたってから、ふと思い出して涙が出ることもあります。
「いつまでにこうなる」という決まった期間はなく、数か月以上かかることもめずらしくありません。悲しみを「乗り越えて、なかったことにする」必要もありません。悲しみを抱えたまま、少しずつ暮らしていけるようになる、という考え方もあります。
月命日や出産予定日、同じ時期の季節がめぐってきたときなどに、悲しみが急にぶり返すこともあります。それは「後戻り」ではなく、大切に思っている気持ちが続いているということです。
もし、眠れない・食べられない・何もできないといった状態が2週間ほど続くときや、日常生活が大きく妨げられているときは、ひとりで耐えずに、産婦人科・心療内科・精神科などの医療機関や相談窓口を頼ってください。具体的な窓口は、後半の「ひとりで抱えないための相談先」にまとめています。
流産で自分を責めてしまうときに:責めなくてよい理由
流産のあと、多くの人が「あのとき無理をしたから」「仕事を休まなかったから」と、原因探しをしてしまいます。ここでは、わかっている医学的な事実をお伝えします。
流産はどれくらい起こる?頻度の目安
日本産科婦人科学会の一般向けページでは、妊娠全体のおよそ15%が自然流産で終わるとされています。また、厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」では、月経の遅れ程度で気づく「化学流産」は全妊娠の3〜4割で起こるとされ、その後の時期の流産は約15%、死産は約1%と紹介されています。
流産は、特別な人にだけ起きることではありません。多くの人が経験していながら、話題にしづらいために、「自分だけが失敗した」と感じやすいのです。
早期流産の主な原因は、赤ちゃん側の偶然の染色体異常
妊娠12週未満の早期流産で最も多い原因は、赤ちゃん(胎芽)側の異常です。日本産科婦人科学会のページでは、流産した組織の染色体を調べると、約80%に異常が見つかったと報告されています。
また同じページには、こうした赤ちゃんの染色体異常はほとんどが偶然によるものであること、そのため次の妊娠に向けて、必要以上に心配しすぎなくてよいことも書かれています。
大切なのは、次の点です。
- 重い物を持った、仕事をした、歩いた、出かけた、といった日常の行動が原因で、早期流産が起きるわけではない
- 気持ちの落ち込みやストレス、「嬉しいと思いきれなかった」ことが原因になるわけでもない
- 受精のときに起きる染色体の変化は、本人にも周囲にも、防ぐことができない
「もっとできたことがあったのでは」と思ってしまうのは、赤ちゃんを大切に思っていた気持ちの裏返しです。その気持ちごと、まずは受け止めてあげてください。
自分を責める考えが止まらないときの向き合い方
頭では「自分のせいではない」とわかっていても、責める考えが浮かんでしまうことはあります。無理に消そうとせず、次のようなことを試せる範囲で試してみてください。
- 責める考えが浮かんだら、「いま、自分を責める気持ちが出ているな」と、心の中で言葉にしてみる
- 「同じことを大切な友人が経験したら、同じ言葉をかけるだろうか」と考えてみる
- 気持ちを紙やスマートフォンのメモに書き出して、頭の外に出す
- 医師や助産師に「原因について、自分にできたことはありましたか」と、率直に聞いてみる
「次があるよ」などの周りの言葉がつらいとき
励ますつもりの「次があるよ」「若いからまた大丈夫」といった言葉が、胸に刺さることがあります。悪気がないとわかっていても、傷つくのは当然です。
そんなときは、答えなくても、聞き流しても大丈夫です。返すなら、たとえば「ありがとう。いまは気持ちの整理がついていないの」「いまはそっとしておいてもらえるとうれしい」と短く伝えてみる、という方法があります。会いたくない日は、会わない選択もできます。
流産後の気持ちを少しずつ整えるために、ひとりでできること
気持ちを無理に切り替えようとしなくても、できる範囲で自分をいたわる方法があります。
- 眠れない日も、横になって目を閉じて休むだけで十分と考える
- 温かい飲み物や、食べられるものを少しずつ口にする
- 悲しい気持ちを、日記やメモに言葉にしてみる
- 妊娠・出産に関する話題やSNSから、しばらく離れる
これらは、必ず効果があると言えるものではありません。合わないと感じたら、やめて大丈夫です。
流産後の夫婦:悲しみ方が違うときの過ごし方
同じ赤ちゃんを失っても、悲しみ方はふたりで同じとは限りません。違いがあること自体は、自然なことです。
夫婦で悲しみ方が違うのは、おかしなことではない
日本助産学会誌に載った研究(竹ノ上ら、2006年)では、自然流産を経験した夫婦の記述を分析しています。流産は夫婦にとって突然の大きなストレスであり、危機にもなりうる一方で、事実を正しく理解することと、悲しみをいっしょに受け止めることが、乗り越える鍵になっていると考察されています。反対に、感じ方や考え方のずれが大きいと、関係がこじれやすいことも報告されています。
悲しみ方の違いは、たとえば次のような形で表れることがあります。
- 妻側は、からだに起きたことなので、実感が強く、何度も思い出して涙が出る
- 夫側は、からだの変化がない分、実感がつかみにくい。妻を支えようと気丈にふるまったり、仕事に集中したりして、気持ちを話さない
- 夫が話題にしないことが、妻には「悲しくないのかな」「軽く見ているのかな」と映る
- 夫は、「話題に出したらつらくさせてしまう」と考えて、あえて触れずにいる
どちらかが冷たいのでも、どちらかが間違っているのでもありません。悲しみの出し方が違うだけ、ということが多いのです。流産後の夫婦関係は、悲しみを「同じにする」ことより、「違いを知り合う」ことで落ち着いていきます。
ふたりで話すときの言い方の例
話す元気があるときに、責める形ではなく、気持ちを伝える形で話すと、すれ違いが少なくなります。そのまま使える言い方の例です。
- 妻から伝えるなら、たとえば「いま、うまく言えないけれど、悲しい。解決しなくていいから、ただ聞いてほしい」と伝えてみる
- 妻から伝えるなら、たとえば「あなたが何も言わないと、わたしひとりだけが悲しんでいるように感じてしまう。あなたの気持ちも、少しだけ聞かせてほしい」と伝えてみる
- 夫から伝えるなら、たとえば「どう声をかければいいか、わからなくて黙っていた。でも、気にしていないわけではないよ」と伝えてみる
- 夫から伝えるなら、たとえば「ぼくも悲しい。うまく言葉にできないけれど、いっしょに過ごしたい」と伝えてみる
- どちらからでも、たとえば「今日は話せそうにない。話せそうな日になったら、声をかけるね」と伝えてみる
話せないときは、話さなくても大丈夫です。同じ部屋で静かに過ごす、散歩をする、食事を用意するといった行動も、気持ちを寄せる方法になります。
流産のあとの妊娠報告がつらいとき
友人や親戚の妊娠報告を聞くのがつらいのも、自然な気持ちです。無理に喜ぼうとしなくてよく、返事を急がなくても大丈夫です。気持ちの整え方は、妊娠報告がつらいの記事も参考にしてください。
夫婦生活や次の妊娠は、急がなくていい
流産のあと、夫婦生活を再開する時期や、次の妊娠を考える時期は、からだの状態と気持ちの両方で決まります。からだについては、主治医の指示に従ってください。出血が落ち着く時期や、月経の再開の目安は、人によって違います。
気持ちの面では、「次を考えなければ」「早くしないと年齢が」と、周りや自分に急かされることがあります。けれど、次の妊娠を考えるかどうか、いつ考えるかは、ふたりの気持ちが追いついたときに決めてよいことです。ふたりの意見が違っていても、それは自然なことです。
流産後に仕事へ戻るとき:無理をしない考え方と使える仕組み
流産のあと、仕事をどうするかは、多くの人が悩むところです。職場に話しにくい、説明したくない、でも普通にはふるまえない、という状態も起こります。
仕事に戻る時期は「からだ」と「気持ち」の両方で決める
仕事に戻る時期に、正解はありません。からだの回復だけでなく、集中できるか、人と会うのがつらくないか、といった気持ちの面も目安になります。
- 動いていたほうが気がまぎれる人もいれば、休まないと気持ちが追いつかない人もいる
- 戻ってから、急に涙が出たり、集中できなかったりしても、おかしいことではない
- 最初から全力にせず、時短や業務量の調整など、少しずつ戻す方法もある
「周りに迷惑をかけるから」と無理に出勤して、あとから気持ちが崩れてしまうこともあります。つらさを感じたら、早めに調整を相談してください。
知っておきたい休みや配慮の仕組み
厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」とこども家庭庁のページでは、働く女性が流産・死産したときに使える仕組みとして、次のようなものが案内されています。
- 妊娠4か月以降に流産・死産した場合は、産後休業の対象になる。事業主は原則8週間は就業させてはいけない。本人が請求し、医師が支障がないと認めた場合は、6週間で働くことも可能
- 流産・死産後1年以内であれば、妊娠週数に関係なく、母性健康管理措置の対象になる。医師などから休業や通院の指導を受けたとき、事業主はそれを守れるように配慮する義務がある
- 主治医の指導は、母健連絡カードを使って職場に伝えられる
休み方は、妊娠の週数や勤務先の制度によって変わります。まずは主治医に「どれくらい休むとよいか」と、職場に出す書類について相談してみてください。
職場に伝えるときの言い方の例
流産のことを、詳しく話す必要はありません。伝える範囲は、自分で決めてよいことです。
- たとえば「体調を崩していて、医師から休むよう言われています」とだけ伝える
- たとえば「しばらく通院が必要です。詳しいことは、話せるようになったらお話しします」と伝える
- 直属の上司ではなく、人事・総務や産業医など、話しやすい相手を窓口にする
流産後にひとりで抱えないための相談先
つらさを人に話すだけで、少し軽くなることがあります。流産や死産を経験した人のための相談先は、公的なものがあります。
流産・死産を経験した人のための相談窓口
こども家庭庁の「流産・死産等を経験された方へ」のページでは、都道府県などが相談支援を行う窓口の一覧が公開されています。名称や受付日時は地域によって違うので、お住まいの地域のものを確認してみてください。
- 都道府県や市区町村の窓口(保健センター、こども家庭センター、不妊専門相談センターなど)では、助産師や保健師、心理の専門職が話を聞いてくれることがある
- 一覧の中には、電話だけでなく、面談やメールで相談できる窓口もある
こども家庭庁のページは、流産・死産等を経験された方へ(こども家庭庁)です。
医療機関に相談するとき
流産の処置や診察を受けた産婦人科は、気持ちの相談もできることがあります。眠れない、食べられない、日常生活が回らないといったときは、産婦人科のほか、心療内科や精神科にも相談してみてください。うつなどの心の不調は、診断を受けることで、休養や治療につなげられる場合があります。
カップルカウンセリング・心理の専門家
「パートナーと気持ちがすれ違っている」「話し合うと、けんかになってしまう」というときは、カップルカウンセリングや、心理の専門家に相談する方法もあります。第三者が間に入ることで、お互いの気持ちを、責められずに言葉にしやすくなります。ひとりで相談することもできます。
不育症が気になるとき
流産や死産を繰り返す場合は「不育症」と呼ばれます。日本産科婦人科学会のページによると、流産が2回続く頻度は2〜5%、3回以上続く頻度は約1%とされ、検査をしても半数以上は原因がわからないといわれています。気になるときは、産婦人科や、自治体の不妊専門相談センターなど、専門の相談先に聞いてみてください。
いますぐ助けが必要なとき
「消えてしまいたい」「死にたい」という気持ちが出てきたときや、自分を傷つけてしまいそうなときは、ひとりで耐えずに、すぐに誰かに話してください。厚生労働省のまもろうよ こころに、無料で話せる窓口が載っています。
- #いのちSOS:0120-061-338(無料、毎日24時間)
- よりそいホットライン:0120-279-338(無料、24時間)
からだに強い痛みや大量の出血があるときや、命の危険を感じるときは、迷わず救急車(119)を呼ぶか、医療機関を受診してください。
よくある質問
Q. 流産のあと、どれくらいで立ち直れますか。
決まった期間はなく、数週間で落ち着く人もいれば、数か月、それ以上かかる人もいます。波があるのもふつうです。日常生活が長く妨げられているときは、医療機関や相談窓口を頼ってください。
Q. 流産したのは、自分のせいではないですか。
日本産科婦人科学会のページでは、妊娠12週未満の流産で最も多いのは赤ちゃん側の異常で、流産した組織の約80%に染色体の異常が見つかったと報告されています。こうした異常はほとんどが偶然に起きるもので、日常の行動や気持ちが原因ではありません。
Q. 流産のあと、仕事は休めますか。
妊娠4か月以降の流産・死産は産後休業の対象です。また、流産・死産後1年以内なら、週数に関係なく、医師の指導に基づく休業などの母性健康管理措置の対象になります。まず主治医に相談し、勤務先の人事・総務に確認してください。
Q. 夫が流産のことを話してくれません。悲しくないのでしょうか。
悲しくないとは限りません。気持ちの出し方が違ったり、どう触れればよいかわからず黙っていたりすることがあります。「ただ聞いてほしい」「あなたの気持ちも少し聞かせてほしい」と、責めない形で伝えてみてください。
Q. 流産後、夫婦関係がぎくしゃくしています。どうしたらよいですか。
悲しみ方の違いは、自然なことです。研究でも、事実の理解と悲しみの共有が乗り越える鍵とされています。話せないときは無理せず、並んで過ごすことから始めても大丈夫です。難しいときは、カップルカウンセリングなどの専門家も頼れます。
Q. 次の妊娠はいつから考えてよいですか。
からだについては主治医の指示に従い、気持ちについてはふたりが納得できるときに考えてよいことです。急ぐ必要はありません。
まとめ:流産で立ち直れないときは、責めずに、ゆっくりで大丈夫
流産のあとに「立ち直れない」と感じるのは、それだけ大切な存在を失ったからです。ひとりで答えを出そうとせず、周りの力も借りながら、少しずつ進んでください。
- 流産後の悲しみ(グリーフ)に決まった期間はなく、立ち直れないと感じるのは自然な反応
- 早期流産の主な原因は赤ちゃん側の偶然の染色体異常で、自分を責めなくてよい
- 夫婦で悲しみ方が違っても大丈夫。違いを知り合い、仕事や次の妊娠も急がず、公的な相談先を頼る
今日を過ごせたことだけでも、十分です。