妊娠中のイライラが夫に向くとき|理由と伝え方
妊娠中なのに、夫のひとことや態度にイライラしてしまう。そんな自分がいやになったり、「わかってくれない」と悲しくなったりしていませんか。妊娠中にイライラが夫に向かいやすいのは、からだと生活が大きく変わるなかで、いちばん近くにいる人に気持ちがぶつかりやすいからで、あなたの性格のせいではありません。
この記事では、妊娠中ならではの理由、飲み会など場面ごとの伝え方の例、夫に知っておいてほしいこと、イライラが止まらないときの相談先を、順にお話しします。パートナーが読んでもわかるように書いているので、よければ一緒に読んでみてください。
この記事でわかること
- 妊娠中にイライラしやすい、からだと心の理由
- 夫に「わかってもらえない」と感じるときに、気持ちの奥にあるもの
- 飲み会、体調、家のことなど、場面ごとの伝え方の例
- 夫側に知っておいてほしいこと
- イライラが止まらないときの目安と、相談できる窓口
妊娠中に夫へのイライラが強くなるのはなぜ?
妊娠中は、からだの中でも外でも、毎日が少しずつ変わっていきます。その変化が重なると、夫の言葉や態度が、いつも以上に気になりやすくなります。
からだの変化と睡眠不足が、気持ちの余裕を減らす
妊娠すると女性ホルモンの分泌が大きく変わり、気持ちが揺れやすくなることがあります。つわり、眠気、だるさ、お腹の張り、腰の痛み、頻尿、寝返りのうちにくさなど、からだの不調も重なります。これらは外から見えにくく、本人にしかわからないつらさです。
眠れない日が続けば、誰でも余裕がなくなります。つわりの時期や程度には個人差が大きく、同じ「妊娠中」でも、毎日の過ごしやすさは人によってまったく違います。いつもなら笑って流せることに腹が立つのは、気持ちが弱いからではなく、からだが疲れているサインかもしれません。
先のことへの不安が、イライラの形で出ることがある
出産は怖くないか、赤ちゃんは元気か、仕事や家計はどうなるか、ちゃんと育てられるか。妊娠中は、考えることが一気に増えます。不安や心細さは、そのままの形では出てきにくく、「イライラ」や「怒り」として出ることがよくあります。
イライラの正体が、実は不安や寂しさだったということは珍しくありません。「なぜこんなに腹が立つのだろう」と感じたら、その奥にある気持ちを一度さがしてみると、少し整理しやすくなります。
夫のことが嫌いになったと感じるのは、自分を責めることではない
イライラが重なると、「夫が嫌いになった」「顔を見るのもつらい」とまで感じてしまうことがあります。そう思う自分に驚いて、「母親になるのにこんな気持ちでいいのだろうか」と責めてしまう人もいます。
でも、からだが疲れて余裕がないときほど、いちばん近い人への気持ちは強く揺れます。「嫌い」という言葉の奥に、「もっと気づいてほしい」「ひとりで抱えているのがつらい」という思いが隠れていることも多いものです。その気持ちは、妊娠中のゆらぎのひとつとして起こりうることで、夫への愛情がなくなったと決めつけなくて大丈夫です。気持ちの整理には、不安の中身をひとつずつ書き出してみる方法もあります。出産への怖さが大きいときは、出産が怖い。理由の整理と、怖さを小さくする準備も参考にしてみてください。
日本の研究でも、妊娠中の気持ちの落ち込みは少なくない
日本人女性を対象にした研究をまとめた報告(2023年、徳満らによる国内の周産期うつ病のメタアナリシス)では、妊娠中のうつ病の有病割合は、妊娠第2三半期(妊娠中期)で14.0%、第3三半期(妊娠後期)で16.3%とされています。数字は調査の方法によって変わりますが、妊娠中に気持ちが沈んだり不安定になったりする人は、決して少なくないことがわかります。
イライラが続くからといって、自分を責めなくて大丈夫です。つらさは「めずらしいこと」ではなく、「支えが必要な時期に起こりやすいこと」だと考えてみてください。
妊娠中、夫が「わかってくれない」と感じるのはなぜ?
「妊娠中の夫がわかってくれない」という悩みは、とても多くの人が抱えています。わかってもらえないと感じる背景には、いくつかの行き違いがあります。
つらさが外から見えにくい
つわりやだるさ、眠れなさは、見た目ではわかりません。お腹が目立つようになる前は、とくにそうです。夫にとっては、妻がどれくらい大変なのかを具体的に想像する手がかりが少ない、ということがあります。
「大丈夫?」と聞かれて「大丈夫」と答えてしまうと、本当に大丈夫なのだと受け取られることもあります。伝わっていないのは、気持ちがないからではなく、情報が足りないからというケースも少なくありません。
「察してほしい」と「どうすればいいかわからない」のすれ違い
妻側は「言わなくても気づいてほしい」と思い、夫側は「何をすればいいのかわからない」と思っている。このすれ違いは、妊娠中にとても起こりやすいものです。
夫に悪気がなくても、「手伝おうか?」という声かけが、妻には「他人ごと」のように聞こえることがあります。反対に、妻の言い方がきつくなると、夫は「責められている」と感じて、黙ったり距離をとったりしがちです。黙ることで、さらに「わかってくれない」と思われる。この流れが、行き違いを大きくします。
夫の風邪や食事のにおいなど、日常の場面でのイライラ
体調やにおいへの配慮は、日々の暮らしの中でもすれ違いやすい場面です。たとえば、夫が風邪気味なのにマスクなしで近づいてくる、においの強い食事を家で食べる、といったことで、イライラが一気に高まることがあります。妊娠中はにおいに敏感になる人もいて、同じ食卓でもつらさが大きく違うことがあります。
こうした場面では、我慢を続けるよりも、「風邪が移らないか不安」「いまはこのにおいがつらい」と、困りごとを短く具体的に伝えてみてください。夫のほうは、気づかないまま過ごしていることも少なくありません。
夫の言動でとくに傷つく場面
共感のないひとこと(「みんな通る道だよ」「そんなに大変?」)や、体型についての発言は、妊娠中はいつも以上に深く刺さることがあります。傷ついたときは、あとで落ち着いてから「あの言い方はつらかった」と、言われてうれしい言い方も添えて伝えてみましょう。
夫も、どう関わっていいか迷っている
妊娠中、夫はからだに変化がない分、自分の役割をつかみにくいものです。「そっとしておいたほうがいいのか」「声をかけたほうがいいのか」と迷っているうちに、動きが止まってしまうこともあります。
夫の不安や戸惑いは、妻の目には見えにくいものです。夫にも、親になることへの緊張や、仕事への責任感があるかもしれません。「わかってくれない」と「どうしていいかわからない」は、同じ場所で向き合っているのに、お互いに背中を向けてしまっている状態、と言えるかもしれません。
妊娠中のイライラが止まらないときは
イライラが何日も続いたり、自分でも止められなかったりするときは、一人で抱え込まず、少し立ち止まって考えてみましょう。
医療機関や窓口に相談したほうがよい目安
次のような状態が2週間ほど続くときは、がまんせず、妊婦健診のときに主治医や助産師に話してみてください。
- 気持ちの落ち込みや、強い不安が続いている
- 眠れない、食べられない状態が続いている
- 何をしても楽しいと思えない
- 感情の波が大きく、日常生活や仕事に支障が出ている
- 夫や周りの人に、つい強く当たってしまい、それを止められない
これはうつなどの診断をするためのものではありません。気になる状態があれば、産婦人科や、必要に応じて心療内科・精神科、お住まいの自治体の窓口に相談できます。妊娠中の心の不調は早めに相談したほうが、あなたも赤ちゃんも楽になることが多いと言われています。
相談できる公的な窓口
市区町村の保健センターや「こども家庭センター」は、妊娠期から子育て期までの相談を一体的に受ける窓口として位置づけられています(こども家庭庁の資料)。名称や受付の方法は自治体によって違うので、お住まいの市区町村のホームページや、母子健康手帳をもらった窓口で確認してみてください。夫のことで悩んでいる、という相談でも大丈夫です。
また、ふたりの関係そのものを整理したいときは、カップルカウンセリングなど、心理の専門家に相談する方法もあります。
いますぐ助けが必要なとき
「消えてしまいたい」「もう生きていたくない」と感じるほどつらいときは、すぐに助けを求めてください。厚生労働省のまもろうよ こころには、電話やSNSの相談窓口がまとめられています。
- #いのちSOS(0120-061-338、無料、毎日24時間)
- よりそいホットライン(0120-279-338、無料、24時間)
命や安全の危険を感じるときは、迷わず119番や110番に連絡してください。
妊娠中の夫の飲み会にイライラするのはなぜ?
「妊娠中に夫が飲み会に行く」ことで、イライラしたり、モヤモヤしたりする人はとても多いようです。その気持ちには、ちゃんと理由があります。
怒りの奥にある気持ち
飲み会そのものより、次のような気持ちが重なっていることがあります。
- 帰りが遅いと、体調が急に悪くなったときに一人で不安
- 自分はお酒も外食もがまんしているのに、という不公平感
- 連絡がなく、いつ帰ってくるかわからない心配
- 酔って帰ってきたあとの片づけや、においがつらい
- 夫が自由に楽しんでいるように見えて、取り残された寂しさ
どれも、わがままではありません。夫を責めたいというより、「大切にされている」という安心がほしいのだと思います。
伝え方の例
「行かないで」と禁止するより、困りごとと気持ちを具体的に伝えるほうが、夫は動きやすくなります。たとえば、次のように伝えてみる方法があります。
- 「飲み会が悪いわけじゃなくて、帰りが読めないと不安になるの。何時ごろに終わりそうか、前の日までに教えてもらえると助かるな」
- 「遅くなるときは、出る前と店を出るときに一言LINEしてくれると安心する」
- 「お腹が張る日があるから、体調が悪い日は早めに帰ってこられるか、あらかじめ相談させてほしい」
- 「にぎやかな場に行くのを止めたいんじゃなくて、私が寂しくなっていることも、わかっていてほしい」
ポイントは、「あなたはいつも〜」と責める形ではなく、「私は〜だから、〜してもらえると助かる」と、自分の気持ちと頼みごとをセットで伝えることです。
あらかじめルールを決めておく
その場で言い合いになる前に、体調が落ち着いているときに、ふたりで目安を決めておくと楽になります。
- 帰宅予定の時間と、遅れるときの連絡のタイミング
- 体調が悪い日は、予定を変えてもよいという合意
- 飲み会のあとは、起こさないように別の部屋で休むかどうか
- 出産前後の時期は、回数を少し減らす期間を決めるかどうか
ルールは、夫を縛るためではなく、ふたりが安心して過ごすためのものです。守れなかったときも、すぐに責めずに「次はどうしようか」と話し直せるとよいですね。
妊娠中のイライラを夫に伝えるときの言い方の例
イライラしているときほど、言葉が強くなってしまいがちです。気持ちを伝えやすくするコツと、そのまま使える例を紹介します。
伝えるタイミングを選ぶ
気持ちが高ぶっている最中や、夫が疲れて帰ってきた直後は、お互いに受け止める余裕がありません。「あとで少し話せる?」と声をかけて、夜のすわって話せる時間や、休日の落ち着いた時間にまわすと、話がこじれにくくなります。
気持ち、事実、お願いの順に伝える
次のように、気持ち、事実、お願いの3つを順に並べてみると、責める形になりにくくなります。
- 「最近つわりでしんどくて、イライラしやすくなっていて、ごめんね。夕食のあとの片づけを、しばらく手伝ってもらえるとすごく助かる」
- 「眠れない日が続いていて、余裕がなくなってる。休日の午前中だけでも、ひとりで休ませてもらえる?」
- 「検診の結果を聞いて少し不安になってる。解決策がほしいわけじゃなくて、まず聞いてもらえたらうれしい」
「やってほしいこと」を具体的にする
「もっと手伝って」では、夫は何をすればいいのかわかりません。次のように、小さく具体的に頼むほうが、動きやすくなります。
- 「ゴミ出しを、毎週火曜と金曜にお願いしたい」
- 「週末の買い物は、重いものをお願いしたい」
- 「帰ってきたら、今日の体調を3分だけ聞いてほしい」
やってもらえたら、「ありがとう、助かった」と短く伝えることも、続けやすさにつながります。あわせて、イライラが強い時期に入る前に「これから、気持ちが揺れやすい時期なんだ」と先に伝えておくと、夫も身がまえずに受け止めやすくなります。家のことの分担そのものに不満がたまっているときは、家事分担の不満がたまる理由と、ふたりで見直す進め方も役立ちます。
夫側に知っておいてほしいこと
ここからは、夫の立場の人にも読んでほしい内容です。もし妻がこの記事を見せてくれたのなら、それは「責めたい」からではなく、「わかってほしい」からです。
妻のイライラは、あなたへの否定とは限らない
妊娠中のイライラの多くは、からだの変化や睡眠不足、不安から来ています。ぶつけられた言葉が強いと傷つきますが、「自分が嫌われた」「自分が悪い」と受け取りすぎないでください。そのうえで、本当にひどい言葉や態度があったときは、落ち着いてから「あれはつらかった」と伝えて大丈夫です。
解決しようとするより、まず聞く
妻が不安や不調を話したとき、すぐに「こうしたらいいよ」と答えを出そうとすると、「わかってもらえなかった」と受け取られることがあります。まずは、「そうなんだね」「それはつらいね」と、そのまま受け止めてみてください。アドバイスは、「アドバイスがほしい? それとも聞いてほしい?」と確認してからで遅くありません。
小さな「見える」行動が安心につながる
大きなことをしようとしなくて大丈夫です。たとえば、次のような行動が、妻の安心につながることがあります。
- 帰宅の時間や予定を、早めに伝える
- 妊婦健診の日を一緒に確認し、行けるときは付き添う
- 家のことで「何をしようか」と聞く前に、先に動く
- 「今日はどう?」と、体調を一日一回聞く
- 飲み会や外出の予定を、決める前に相談する
夫もつらいときは、一人で抱えない
妊娠・出産の時期は、夫の側にも大きな負担や不安がかかります。日本人男性の周産期うつ病の有病割合は8.2〜13.2%と報告されていて(徳満ら、精神神経学雑誌、2023年)、父親のメンタルヘルスも大切なテーマです。
仕事のプレッシャー、お金の心配、親になることへの戸惑いは、夫にもあります。「自分も余裕がない」と感じたら、妻に話す、信頼できる人に話す、自治体の窓口や医療機関に相談する、など、どこかに出していきましょう。どちらかだけが我慢するのではなく、ふたりで支え合える形をさがしていくことが大切です。
妊娠中の夫へのイライラは、いつまで続く?
「このイライラは、いつまで続くのだろう」と不安になる方もいるかもしれません。
個人差が大きく、いつ終わるとは言い切れない
つわりが落ち着いて楽になる人もいれば、妊娠後期に体が重くなって、またつらくなる人もいます。時期や強さは人によってまったく違い、「何週になれば必ず落ち着く」と言い切ることはできません。
先ほどの研究でも、妊娠中のうつ病の有病割合は出産が近づくにつれて増える傾向があるとされていました。出産直前は、お腹も大きく、不安も強くなりやすい時期です。気持ちの揺れが増えることもあると知っておくだけで、少し構えやすくなります。
暴力や、怖さを感じるときは
ここまでは、ふたりで話し合うことを前提にしてきました。ただし、次のような場合は、「話し合う」よりも、あなたと赤ちゃんの安全を優先してください。
- 殴る、蹴る、物を投げる、お腹をたたくなどの暴力がある
- 大声でおどす、無視を続ける、行動を細かく監視する、お金を渡さないなどがある
- 夫の言動が怖くて、自分の気持ちを言えない
内閣府の「DV相談ナビ」(#8008)に電話すると、お近くの配偶者暴力相談支援センターにつながります。24時間受付の「DV相談プラス」(0120-279-889)もあります。ひとりで抱えず、早めに相談してください。
よくある質問
Q. 妊娠中にイライラして、夫に当たってしまいます。普通のことですか?
妊娠中は、ホルモンの変化、睡眠不足、不安などが重なり、イライラしやすくなることがあります。決してめずらしいことではありません。ただし、強く当たってしまったあとに自己嫌悪になり、それが長く続くときは、早めに主治医や自治体の窓口に話してみてください。
Q. 妊娠中のイライラが止まらないときは、どうすればいいですか?
まず、休めるときに休み、頼めることは頼んで、予定や家事のハードルを下げてみてください。それでも、気持ちの落ち込みや不安、眠れない状態が2週間ほど続くようなら、妊婦健診のときに、主治医や助産師に話してください。
Q. 夫が飲み会に行くのを止めていいですか?
禁止するかどうかより、「何が心配でイライラするのか」を具体的に伝え合い、帰宅時間や連絡のしかたなど、ふたりが安心できるルールを決めることをおすすめします。体調が悪い日や、出産前後の時期の目安も、あらかじめ話しておくと安心です。
Q. 夫が妊娠中の大変さをわかってくれません。どう伝えればいいですか?
「大変」とだけ伝えるより、「夜に何度も目が覚める」「お腹が張って立っているのがつらい」と、具体的な状態と、してほしいことをセットで伝えると伝わりやすくなります。口で言いにくいときは、メモやLINEも使えます。
Q. 夫に妊娠中のことを話しても、ケンカになってしまいます。
話すタイミングを、疲れている時間帯や感情が高ぶっているときからずらしてみてください。それでも難しいときは、助産師や保健師、カップルカウンセリングなど、第三者に入ってもらう方法もあります。
まとめ
妊娠中のイライラと夫との行き違いは、あなたのせいでも夫のせいでもなく、からだと生活が大きく変わる時期に起こりやすいことです。
- 妊娠中のイライラは、ホルモンの変化、睡眠不足、不安、生活の変化の差が重なって起こりやすく、あなたの性格の問題ではありません
- 夫にわかってもらうには、「気持ち、事実、お願い」を具体的に伝えること。飲み会などは、禁止ではなくふたりのルールで安心をつくること
- イライラが止まらず、落ち込みや不眠が2週間ほど続くときは、妊婦健診や自治体の窓口に相談を。暴力や怖さがあるときは、安全を最優先に
妊娠中の夫へのイライラは、完璧に対処しなくても大丈夫です。できるところから、少しずつ、ふたりの話し方を整えていきましょう。