夫の育休が役立たずに感じるとき。担当を決める話し方
せっかく夫が育休を取ってくれたのに、「正直、いないほうが楽かもしれない」「夫が育休中なのに役立たずに見えてしまう」と思って、そんな自分にもやもやしていませんか。あるいは夫側の方で、育休を取ったのに「自分は役に立てていない」と感じているかもしれません。
先に結論をお伝えします。夫の育休中に「役立たず」と感じてしまうのは、夫の人柄や愛情の問題というより、「誰が何を担当するか」が決まっていないことと、夫も戸惑っていることから起きやすいものです。育休に入る前と、途中のふたりの話し合いで、かなり変えられます。この記事では、そう感じてしまう理由、前と途中で決めておくこと、言い方の例、夫側の読者へのヒントをまとめます。
この記事でわかること
- 夫の育休中に「役立たず」「いらない」と感じてしまう理由
- 育休に入る前と途中に、ふたりで決めておくこと
- 「手伝う」ではなく「担当」にするための分け方の例
- そのまま使える伝え方の例(妻から夫へ、夫から妻へ)
- 夫側の読者へ。育休中、何をすればいいのか
- 話し合ってもつらいときの相談先
夫の育休中に「役立たず」と感じてしまうのは、めずらしいことではない
夫が家にいるのに、なぜか楽にならない。むしろ疲れが増える。ときには「家にいられると、かえって邪魔に感じてしまう」ことさえあるかもしれません。そんな気持ちは、責められるようなものではありません。まずは、その気持ちが生まれる背景を整理しましょう。
夫 育休 イライラ。期待と現実のずれが大きいから
育休が始まる前は、「これで少しは休める」「ふたりで赤ちゃんを見られる」と期待が大きくふくらみます。ところが実際には、赤ちゃんはいつ泣くかわからず、授乳や寝かしつけは思うようにいきません。夫が家にいる分、家事の「見える量」も増えます。期待が大きかったぶん、現実とのずれが、いらだちとして出てきやすくなります。
夫 育休 いらない。そう思ってしまう自分を責めなくていい
「いらない」「いないほうがまし」という言葉は、強く聞こえます。でも多くの場合、これは夫の存在そのものを否定しているのではなく、「いまの状態では、自分の負担が減っていない」という疲れのサインです。
たとえば、夫に頼むより自分でやったほうが早いと感じる、頼んだことを説明する手間が増える、夫の様子を気にかける仕事まで増える、といった場面が重なると、「いるのに楽にならない」感覚になります。それは感じ方としておかしくありません。
夫側も「役に立てていない」と感じている
実は、夫側も同じ場面で苦しんでいることがあります。何をすればいいかわからない、やってみても妻のようにうまくいかない、赤ちゃんが自分では泣きやまない。そんなとき、「自分は役立たずだ」と感じて、自信をなくしてしまう人もいます。その気持ちが、つい家事に逃げる、スマホを見る、外に出るといった行動になり、妻からは「何もしていない」と見えてしまうこともあります。
つまり、ふたりとも「うまくいっていない」と感じているのに、そのことをお互いに言えていない。この状態が、いちばん苦しくなりやすいところです。
育休中の夫が「役立たず」に見えてしまう理由
理由を知ると、「夫が怠けている」「自分の頼み方が悪い」という単純な見方から、少し離れられます。ここでは、育休中ならではの理由に絞って整理します。
役割が決まっていないまま、育休が始まっている
いちばん多いのは、これです。「育休を取る」ことは決めても、「育休中に誰が何を担当するか」までは決めていないまま、当日を迎えるパターンです。
役割が決まっていないと、夫は「いま、何をしたらいいのか」がわからず、妻が指示を出すことになります。すると妻は、指示を出す仕事、頼む仕事、様子を見る仕事が増えます。夫は「言われたことをやる」だけになり、自分から動けません。このやり取りが続くと、お互いに疲れてしまいます。
夫が赤ちゃんのお世話の経験が少ない
2021年の総務省「社会生活基本調査」では、6歳未満の子どもがいる夫婦と子の世帯の育児時間は、1日あたり夫が1時間5分、妻が4時間でした(総務省統計局)。育休に入る前の時点で、赤ちゃんのお世話に触れてきた時間には、大きな差があることが多いのです。
この差があるまま育休が始まるので、最初のうちは、夫が妻のようにできなくても自然です。妻にとっては「どうしてこれができないの」と見えても、夫にとっては初めて取り組むことばかりだったりします。経験の差は、能力の差ではなく、時間の差です。
妻のからだが回復の途中で、余裕がない
出産のあと、妻のからだは、傷の痛みや疲れ、ホルモンの変化など、大きな回復の途中にあります。睡眠も細切れになりがちです。2020年に国立成育医療研究センターが発表した調査では、産後1年未満の母親の約10.8%、父親の約11.0%に、気持ちの落ち込みや不安などの心理的な苦痛が強い状態がみられ、母親の睡眠不足や父親の長時間労働が関連していました(国立成育医療研究センター、2020年)。
余裕がない状態では、夫の小さなミスや、やり方のちがいが、いつもより大きく感じられます。これは妻の性格の問題ではなく、状況の影響が大きいと考えられます。
「休み」と「育児の仕事」の受け止めがずれている
夫の中には、無意識に「育休はお休み」と考えている人もいます。一方、妻は「育休は、育児と家事を一緒にやる期間」と考えています。このずれがあると、夫が好きな時間を過ごしている姿が、妻の目には「何もしていない」と映ります。
どちらが正しいということではなく、「この期間をどう過ごすのか」を言葉にしていなかったことが原因、ということが多いのです。
「取るだけ育休」に見える。何もしない、手際が悪い夫の姿
「育休を取っただけで、中身が伴っていない」と感じる人は少なくありません。日中は寝ている、スマホを見ている、お世話を頼むと手際が悪くて、結局自分でやり直してしまう。そんな姿が続くと、「取るだけ育休」という言葉が浮かびます。
ただ、何もしていないように見える背景には、「何をしたらいいかわからず固まっている」「失敗して責められるのが怖い」という戸惑いが隠れていることもあります。手際の悪さは、やる気のなさより、経験の少なさや、やり方を教わっていないことから来ている場合が多いものです。やり直すのは最後の手段にして、まず任せる範囲を決めるところから始めてみてください。夫婦の会話そのものが減っているときは、夫婦で会話がないのはなぜ?理由の切り分けと対処法も参考になります。
妻の体調への気遣いがない、家事のあとの態度に腹が立つ
産後で体がつらいのに、「大丈夫?」のひとことがない。家事をひとつやったあとに「やってあげた」と言わんばかりの態度をとられる。そんな場面で、気持ちのすれ違いを強く感じる人もいます。
妻は「わかってほしい」、夫は「認めてほしい」と思っていて、どちらも相手に求めているものが届いていない状態です。夫に悪気がなく、妻の体調の重さが見えていないだけ、ということもあります。体の状態は「今日は傷が痛む」「眠れていなくて頭が回らない」と具体的に言葉にして、助けてほしいことをセットで伝えると伝わりやすくなります。
育休に入る前に、ふたりで決めておくこと
ここからは、具体的にできることです。理想は、育休が始まる前に決めておくことですが、すでに始まっている場合は「途中から決め直す」で大丈夫です。
「手伝う」ではなく「担当」にする
「手伝う」という言い方は、主役が妻で、夫は補助、という前提を含んでいます。この前提があると、夫は指示を待つ側になり、妻は頼む側になります。
そこで、「手伝う」をやめて、「担当」にすることをおすすめします。担当とは、そのことについて、考えるところから最後までを任せる、という意味です。たとえば「洗濯を手伝う」ではなく、「洗濯は夫の担当。洗う、干す、たたむ、しまうまで」と決めます。担当になると、妻はそのことを考えなくてよくなります。ここが、気持ちの余裕につながります。
担当を、名前をつけて分ける
担当は、漠然と「家事をやる」ではなく、具体的な名前をつけて分けるとうまくいきやすいです。
- 朝のミルク(または授乳のあとのげっぷ)と、朝のおむつ替え
- 沐浴とお風呂あがりの保湿
- 洗濯(洗う・干す・たたむ・しまう)
- 夕食づくりと、その後片付け
- ゴミ出しと、買い物の確認
ここに書いたのは一例です。ふたりの暮らしに合わせて、「これは夫の担当」「これは妻の担当」「これは日によって交代」と、紙やスマホのメモに書き出します。見える形にしておくと、「言った、言わない」が減ります。
夜間の分担を決める
夜の授乳やおむつ替えは、寝不足がたまりやすい時間帯です。ここを決めずに過ごすと、「いつも自分だけが起きている」という不満が出やすくなります。
たとえば、「夜10時から午前2時までは夫が担当、そのあいだ妻はぐっすり寝る」「週のうち何日かは、夫が夜をまるごと担当する」のように、時間やお世話の種類で区切って決めます。授乳が母乳中心の場合は、夫ができるのは、おむつ替えやげっぷ、寝かしつけ、授乳後の片付けなどになることもあります。そのあたりは、ふたりの状況に合わせて話し合ってください。
妻がひとりで休む時間を、先に決める
見落とされがちですが、大切です。「妻が赤ちゃんから離れて休む時間」を先にスケジュールに入れてしまいます。たとえば、毎日30分は妻が外に出る、週に一度は半日、妻の自由時間にする、といった形です。
夫が育休中の最大の利点のひとつは、妻が赤ちゃんから「いったん離れられる」ことです。その時間を最初に確保しておくと、「いるのに楽にならない」感覚はかなり減ります。
夫が覚える時間と、失敗していい時間をつくる
最初から上手にできる人はいません。夫が赤ちゃんのお世話を練習する時間を、育休の最初の数日に意識して入れておきます。妻が横について教える、動画や母子手帳の資料を一緒に見る、といった方法があります。
そのとき大切なのは、「やり方が妻と違っても、赤ちゃんの安全に問題がなければ、まず任せる」というルールです。手順は違っても、結果が大きく変わらないことは多いものです。
育休の途中で「役立たず」と感じたときの話し方
すでに育休が始まっていて、もやもやが出てきた。そんなときは、責める言い方ではなく、状況を言葉にして、次の一歩を一緒に決める言い方がおすすめです。
妻から夫へ。伝え方の例
責める言い方は、夫に「やる気をなくす」方向の反応を引き起こしやすくなります。「あなたは役立たず」ではなく、「いまの自分の状態」と「お願い」を伝えます。
- たとえば「育休を取ってくれて、ありがたいと思っている。ただ、いまは私の疲れが減っていなくて、どうしてか自分でもよくわからずにいる。一度、担当を決め直したい」と伝えてみる
- たとえば「頼まれるのを待つのではなく、洗濯は全部お願いしたい。そのやり方は任せる」と、担当ごと任せてみる
- たとえば「うまくいかなかったときは、責めるつもりはない。次どうするかを一緒に考えたい」と、先に安心を伝えてみる
- ダメ出しが続くと夫のやる気が下がりやすいので、できたところを具体的に褒めて、「ありがとう、助かった」と感謝を言葉にしてみる
夫から妻へ。伝え方の例
夫側から話を切り出すのも、助けになります。「自分は何もできていない」と黙り込まず、わからないことを言葉にします。
- たとえば「何をすれば一番助かるか、教えてほしい」と、答えを聞いてみる
- たとえば「いま、役に立てている気がしなくて少し落ち込んでいる。担当を決めてもらえると動きやすい」と、正直に伝えてみる
- たとえば「できないところは、練習するから見ていてほしい」と、一緒に学ぶ姿勢を示す
週に一度、短い振り返りの時間をとる
毎日は大変なので、週に一度、10分でも、ふたりで状況を話す時間を決めます。「今週うまくいったこと」「しんどかったこと」「来週変えたいこと」を、順番に言うだけです。気持ちがたまる前に出せるので、爆発を防ぎやすくなります。
育休中の夫は何をする? 夫側の読者へ
ここからは、夫の育休中に「何をすればいいのか」と悩む夫側の読者に向けた内容です。妻側の方が読んでも、気持ちがわかる助けになるかもしれません。
育休 夫 何する。まず、妻に「担当をください」と言ってみる
育休中に何をするか迷う時間が長くなるほど、動きにくくなります。まずは、「何をやるか」を妻と一緒に決めることをおすすめします。そして、できれば「作業」ではなく「担当」で決めます。たとえば「食事まわりはすべて自分」のように、一つの領域をまるごと引き受けると、自分から動きやすくなります。
担当を決めたら、やり方を自分で調べて工夫してかまいません。妻の指示を待たずに、自分で考えて動く場面が増えるほど、「役に立っている」実感も生まれやすくなります。
男性 育休 取ったけど、感謝されないと感じるとき
育休を取るために、職場で調整をしたり、勇気を出したりした人もいるはずです。それなのに感謝されないと感じるのは、さびしいものです。
ただ、妻は産後のからだで、睡眠不足の中にいます。感謝を伝える余裕がないだけ、ということも多いのです。「感謝してほしい」という気持ちは、そのまま伝えてかまいません。たとえば「やったことを見てもらえると、うれしい」と、責める形ではなく、希望として話してみてください。
「できなかった」ことより、続けたことを見る
育休中は、うまくいかないことが続くものです。でも、毎日赤ちゃんと向き合い続けたこと自体に、大きな意味があります。慣れてきたとき、夫婦の関係も、赤ちゃんとの関係も、少しずつ変わっていきます。
話し合ってもつらいとき、ひとりで抱えこまないために
担当を決めても、気持ちが追いつかないことはあります。そんなときの目安と、相談先をまとめます。
気持ちの落ち込みや不安が強いときは、医療機関や窓口へ
眠れない、食欲がない、何も楽しめない、涙が止まらない、といった状態が2週間以上続くときは、産後のこころの不調のサインかもしれません。これは妻にも夫にも起こりえます。診断ではなく目安ですが、気になるときは、産婦人科や心療内科・精神科などの医療機関、お住まいの自治体の保健センターやこども家庭センター(子育て世代包括支援センター)に相談してください。
いますぐ話を聞いてほしい、つらくて消えてしまいたいと思うときは、厚生労働省の「まもろうよ こころ」に、無料で相談できる電話窓口(#いのちSOS、よりそいホットラインなど)がまとめられています。
ふたりだけではまとまらないとき
話し合っても、同じことのくり返しになる。話し合い自体が、けんかになってしまう。そんなときは、カップルカウンセリングなどの心理の専門家に、第三者として入ってもらう方法もあります。どちらかが悪いかを決める場ではなく、お互いの気持ちを整理して、話し合いを進めやすくする場です。
暴力や、おびえるような言動があるとき
「ふたりで話し合う」よりも、安全が優先です。夫から、または妻から、暴力や怒鳴る、物にあたる、行動を制限するなどの言動があって、こわいと感じるときは、DV相談ナビ(#8008)などの公的な窓口に相談してください。子どもに危険がありそうなときは、児童相談所(189)にもつながります。
夫の育休と「役立たず」についてのよくある質問
Q. 夫が育休中なのに、役立たずに感じてしまう私は冷たいでしょうか?
冷たくありません。産後の疲れや睡眠不足の中で、期待が大きかったぶん、現実とのずれが気持ちに出るのは自然です。大切なのは、その気持ちを責めずに、「なにが負担になっているのか」を言葉にして、担当を決め直すことです。
Q. 夫の育休が「いらない」と思ってしまうのは、おかしいですか?
おかしくありません。多くの場合は、夫を否定したいのではなく、「いまの状態で、自分の負担が減っていない」という疲れのサインです。夫が悪いのか、自分が悪いのかを決めるよりも、役割を具体的に決めることで、状況が変わることが多くあります。
Q. 夫が育休中に何もしない、スマホばかり見ているときはどうすればいいですか?
責めるより先に、「いま何を担当してほしいか」を具体的に伝えてみてください。たとえば「午前中は赤ちゃんを見てほしい」「夕食は毎日お願いしたい」のように、時間と内容を決めて頼みます。それでも変わらないときは、週に一度の振り返りの場で、気持ちを伝える時間をつくりましょう。
Q. 夫の育休を、もう「取った意味がなかった」と感じたら、遅いですか?
遅くありません。育休の期間が残っているなら、いまから担当を決め直せます。育休が終わりに近い、あるいはもう終わっている場合でも、そこで決めた分担は、復帰後の暮らしにも役立ちます。
Q. 男性が育休を取ったけど、何をすればいいかわからないときは?
まず妻に「いま、一番助かることは何か」を聞き、その中から一つの領域を「まるごと担当」にしてみてください。わからないことは、一人で抱えずに口に出すことが大切です。気持ちの落ち込みが強いときは、夫自身も、医療機関や自治体の窓口に相談して大丈夫です。夫自身のつらさについては、男性の産後うつとは?父親の割合・サイン・夫婦でできることも参考にしてください。
まとめ。夫の育休中に「役立たず」と感じたら
夫の育休中に「役立たず」「いらない」と感じてしまうのは、めずらしいことではなく、ふたりとも戸惑っている状態です。大切な点を3つにまとめます。
- 「夫 育休 役立たず」と感じるのは、人柄の問題より「担当が決まっていないこと」と「経験の差」が原因になりやすい
- 「手伝う」ではなく「担当」にして、名前をつけて分け、夜間と妻の休む時間も先に決める。途中からの決め直しでも遅くない
- つらさが強いときは、ふたりだけで抱えず、医療機関・自治体の窓口・心理の専門家を頼ってよい
育休は、ふたりで赤ちゃんと向き合う、ちょうどよい練習の期間でもあります。うまくいかない日があっても、話し合い直せば大丈夫です。