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出産が怖い。理由の整理と、怖さを小さくする準備

公開 約14分で読めますかぞくる編集部

出産が怖いと感じるのは、特別なことでも、母親になる気持ちが足りないからでもありません。初めてのことへの不安、痛みへの心配、命にかかわるかもしれないという怖さは、多くの妊婦さんが抱える自然な気持ちです。

この記事では、出産が怖い理由を整理し、怖さを小さくする準備と、パートナーとの分け合い方、強い恐怖が続くときの相談先をまとめます。怖さをなくすことより、「ひとりで抱えない形にすること」を目指します。

この記事でわかること

  • 出産が怖い気持ちが生まれる理由(痛み・命の不安・初産・前回の経験など)
  • 怖さを小さくする準備と、主治医・助産師に聞いておきたいこと
  • 出産が怖いとパートナーに伝える言い方と、夫ができること
  • 恐怖が強く続くときの目安と、相談先

出産が怖いのは、ごく自然な気持ちです

怖いと感じたとき、「こんなことで怖がってはいけない」と自分を責めてしまう人もいます。まずは、その気持ちが珍しくないことを確認しましょう。

妊娠中の気持ちの揺れは、ホルモンの変化や生活の変化などが重なって起きやすいものです。厚生労働省「妊娠出産・母性健康管理サポート」のコラムでも、妊娠中に気分が落ち込んだり不安になったりすることは珍しくなく、つらいときはひとりで我慢せず、医師や身近な人に相談してよいと案内されています。

出産への恐怖を研究した日本の報告もあります。2023年に学術誌 Healthcare に掲載された、日本の妊婦10人への面接調査(Takegata らによる)です。この論文では、出産への強い恐怖(トコフォビアと呼ばれます)の割合は、海外の系統的レビュー(2017年)をもとに約14%と推定されると紹介されています。つまり、強い怖さを抱える人は、決して少数のめずらしい人ではありません。

怖さは「弱さ」ではなく、これから大きな出来事を迎える体と心が出している「準備したい」というサインと考えてみてください。

自分に声をかけるなら、たとえば「怖くて当たり前。それだけ大切に思っているということ」「全部ひとりで引き受けなくていい」「わからないことは聞いていい」といった言葉があります。励ましの言葉は、誰かからもらうだけでなく、自分自身にかけてもかまいません。

出産が怖いと感じる主な理由

「出産が怖い」とひとことで言っても、中身は人によって違います。何が怖いのかを分けて考えると、できる準備が見えてきます。

出産が怖い、痛みに弱いと感じるとき

陣痛や出産の痛みは、経験したことがないので想像がつかず、不安が大きくなりやすい部分です。「痛みに弱いから耐えられないかもしれない」と感じる人もいます。

痛みの感じ方には個人差があり、事前にはかれるものではありません。だからこそ、「耐えられるか」だけで考えず、「痛みをやわらげる方法にどんなものがあるか」「つらくなったとき、誰にどう伝えるか」を前もって知っておくと、気持ちが少し落ち着きます。痛みをやわらげる方法の考え方は、あとの「怖さを小さくする準備」で触れます。

出産が怖い、死にたくないと感じるとき

「出産で命を落としたらどうしよう」「赤ちゃんに何かあったらどうしよう」という怖さも、よくある気持ちです。ここでいう「死にたくない」は、命を守りたいという自然な思いのあらわれです。

事実としては、日本の妊産婦死亡は大きく減っています。厚生労働省の人口動態統計(国立社会保障・人口問題研究所の表5-28)によると、妊産婦死亡数は1950年に4,117人(出産10万件あたり161.2)でしたが、2023年は23人(同3.1)です。年による増減はありますが、出産で命を落とすことは、かつてに比べてずっとまれになっています。

ただし、「まれ」だから心配しなくてよい、とは言えません。ゼロではないからこそ怖いのは当然です。その怖さは、定期的な妊婦健診を受けること、気になる症状を早めに伝えること、緊急時の体制を分娩する施設に確認しておくことで、形のある備えに変えられます。

出産が怖い、初産で何もわからないとき

初めての妊娠・出産は、何が普通で何が異常なのか、いつ病院に連絡すればよいのかが、わかりにくいものです。「わからないこと」そのものが怖さのもとになっていることがよくあります。

初産の方は、陣痛が来たらいつ連絡するか、入院までの流れ、入院中の過ごし方を、あらかじめ主治医や助産師に具体的に聞いておくと、当日の「どうしよう」が減ります。聞くことのリストは次の章にまとめます。

2人目の出産が怖い。前回の出産やこれまでの経験が影響しているとき

2人目以降の人が、前回の出産がつらかったために怖いと感じることもあります。経験があるぶん、痛みや当日の流れを具体的に覚えていて、それが怖さを呼び起こすこともあります。「経験者なのに怖い」と責める必要はありません。また、流産や死産の経験、医療を受けたときのつらい記憶が、今回の怖さにつながっている人もいます。

前述の2023年の論文でも、恐怖の背景には、出産経験の有無や過去のつらい経験が関わるとされています。前回のことを「もう終わったこと」と片づけず、今回の主治医や助産師に「前回こうだったので、ここが不安です」と伝えておくことが、いちばんの備えになります。

医療や病院に対する不安があるとき

内診や処置、会陰切開、帝王切開など、医療的な処置への不安もあります。「何をされるかわからない」「自分の意思が通らないかもしれない」という気持ちが、怖さを大きくします。

処置の目的や必要になる場面を事前に聞いておくこと、わからないことはその場でも質問してよいと決めておくことで、「されるがまま」の感覚を減らせます。

出産が怖いときの準備で、怖さを小さくする

怖さの正体が少し見えたら、次は準備です。準備をしても怖さが消えるわけではありませんが、「何が起きるか見通せる」だけで、気持ちはかなり軽くなります。

情報の取り方を決める

怖いと、体験談や怖い話ばかり検索してしまい、かえって不安が増すことがあります。調べすぎてしまう自覚があるときは、見る場所を絞りましょう。

  • 主治医・助産師の説明、母子健康手帳、自治体の母親学級・両親学級の資料を中心にする
  • 検索するのは「1日1回、10分だけ」など、時間を決める
  • 体験談は、事実と個人の感想を分けて読む。他の人の出産が自分と同じ経過をたどるとは限らない
  • 夜に調べると不安が増しやすいので、気になることはメモして、次の健診で聞く

主治医・助産師に聞いておきたいこと

怖いと感じていること自体を、遠慮せず伝えてかまいません。「怖くてたまらない」と伝えることで、説明の仕方や関わり方を変えてもらえることがあります。

  • 陣痛が始まったとき、何分間隔になったら、どこに連絡するか
  • 夜間・休日の連絡先と、入院までの流れ
  • 赤ちゃんや自分に急な変化があったときの対応体制(緊急時の連携先など)
  • 痛みをやわらげる方法には何があり、自分の場合は選べるのか(無痛分娩を含む)
  • 帝王切開になるのはどんなときか
  • 立ち会いができる範囲と、パートナーが何をするとよいか
  • 産後の入院中の過ごし方、母子の相談体制

産院選びの途中の人や、転院を考えている人は、説明を聞いて納得できるかも目安になります。質問したときに、わかる言葉で答えてもらえるか、不安を話しても受け止めてもらえるかを、健診や見学の機会に感じ取ってみてください。話しやすい相手がいるだけで、当日の安心感は変わります。

バースプランを「話し合いの材料」にする

バースプランは、どんなお産にしたいか、不安なこと、してほしいことを書き出して、医療者に伝えるためのものです。決められた形式のない施設もありますし、自分でメモにしてもかまいません。

大切なのは、「希望どおりにする約束」ではなく、「気持ちを共有する話し合いの材料」と考えることです。お産は赤ちゃんと自分の状態によって、予定が変わることもあります。「できれば〜したい」「それがむずかしいときは、理由を説明してほしい」と書いておくと、変更になったときの納得感が違ってきます。

書き出すとよいこと

  • 特にこわいこと(痛み、処置、緊急時の対応など)
  • 痛みへの対応についての希望や、迷っていること
  • 陣痛中にしてほしいこと・してほしくないこと(声かけ、マッサージなど)
  • 立ち会いするパートナーに頼みたいこと

両親学級・母親学級に参加する

自治体や分娩施設では、お産の流れや呼吸法、赤ちゃんのお世話を学ぶ両親学級・母親学級が開かれています。実施の有無や内容は地域・施設によって違うので、お住まいの自治体の保健センターや、分娩する施設に確認してください。

流れを知るだけでなく、同じ時期の妊婦さんやパートナーと会えることも、怖さをやわらげてくれます。夫婦で参加できるものなら、パートナーも「何をすればよいか」を具体的に知れるので、あとで説明するやり取りが楽になります。

痛みへの対応は「選択肢として主治医に相談」から

痛みが怖い場合、無痛分娩など、痛みをやわらげる方法があるかどうかを、早めに主治医に聞いてみましょう。対応している施設かどうか、できる時間帯や条件、利点とリスクは、施設によって違います。

どれがよい・悪いと決める必要はありません。自分の体の状態や、分娩する施設で選べることをふまえて、主治医と一緒に考える材料にしてください。

怖い気持ちを日々の中でゆるめる

準備とあわせて、日常の中で心と体を休める工夫もあります。

  • 怖い考えが止まらないときは、「今この瞬間に起きていること」に意識を戻す(深呼吸、ゆっくり歩く、温かい飲み物を飲むなど)
  • 睡眠と食事を整える。眠れない日が続くと、不安は大きくなりやすい
  • 怖い気持ちを日記やメモに書き出し、「怖いこと」と「準備できること」に分ける

眠れない夜や、夢に出てくるほど不安なときは、布団の中で考え続けず、いったん起きて明かりを落とした部屋で温かい飲み物を飲んだり、ゆっくり呼吸したりして、気持ちが落ち着いてから横になります。頭に浮かぶことはメモに書き出して「朝に考える」と決めておくと、夜に抱え込みにくくなります。

妊娠後期に出産が近づくと、怖さが強まる人もいます。入院の荷物、移動手段、連絡先など、具体的に準備できることから手をつけると、気持ちが落ち着きやすくなります。産後の気持ちの揺れが気になる人は、マタニティブルーとはの記事も読んでみてください。

出産が怖いことをパートナー(夫)に伝えるとき

怖い気持ちは、ひとりで抱えるほど大きくなりがちです。パートナーに伝えることは、準備のひとつです。

伝え方の例

「こわい」と言うと、パートナーが「大丈夫だよ」とすぐ励ましてしまい、気持ちが受け止められなかったと感じる人もいます。そんなときは、してほしいことを先に伝えると、すれ違いが減ります。

  • たとえば「出産のことを考えると、すごく怖くなる日がある。解決してほしいのではなく、聞いてほしい」と伝えてみる
  • たとえば「痛みが一番怖い。当日、どんな声かけをされると落ち着くかを、一緒に考えてほしい」と伝えてみる
  • たとえば「次の健診で聞きたいことをメモしたから、一緒に見てほしい」と伝えてみる

夫ができること

パートナー側も、「何をしたらよいかわからない」と戸惑っていることが多いものです。次のようなことは、出産の準備にもなり、妻の安心にもつながります。

  • 「怖い」という言葉を、まず否定せずに最後まで聞く
  • 「大丈夫」と言い切る前に、「怖いんだね」と気持ちを受け取る
  • 健診や両親学級に、仕事の調整をして一緒に参加する
  • 病院までの経路、連絡先、陣痛時の移動手段、上の子の預け先などを、一緒に確認して準備する
  • 陣痛中の声かけの仕方を、事前に聞いておく

夫も怖いとき

パートナーのほうも、「出産が怖い」「妻に何かあったらどうしよう」と感じることがあります。その気持ちも自然なものです。

ただ、同じ不安を同時に抱えると、お互いに頼れなくなることがあります。夫婦で気持ちを言葉にし、「ふたりとも怖い。だから準備を一緒にしよう」と、怖さを共通の課題にしてみてください。どちらが強いかを競う必要はありません。妊娠中のいらだちがパートナーに向いてしまうときは、妊娠中のイライラが夫に向くときも参考になります。

出産が怖くて「やめたい」と思うとき

「もう出産をやめたい」「逃げたい」と思うほど追い詰められる人もいます。この気持ちは、怖さがそれだけ大きいというサインで、あなたが悪いわけではありません。

妊娠を続けるかどうかは、体の状態も関わる大きな判断で、気持ちが揺れている中でひとりで決めるものではありません。まず、主治医や助産師に「出産が怖くて、やめたいほどつらい」と、そのまま伝えてください。自治体の保健センターなどにも、妊娠中の悩みを聞いてくれる窓口があります。

また、出産が怖くて、これから先に妊娠をためらう人もいます。その場合も、パートナーと話し合うこと、必要なら専門家に相談することが選択肢です。急いで答えを出さなくて大丈夫です。

出産が怖い気持ちが強く続くときの目安と相談先

怖さには波があります。ただ、次のような状態が続くときは、早めに相談したほうがよいサインです。

  • 出産のことを考えると、息苦しさ、動悸、涙が止まらないなどが続く
  • 眠れない、食べられない日が続いている
  • 仕事や家事が手につかないほど、頭から離れない
  • 「出産しない」「この妊娠をなかったことにしたい」とばかり考えてしまう
  • 気分の落ち込みや、強い不安が2週間以上続いている

これは診断ではありません。気になるときは、次のところに相談してみてください。

  • 主治医・助産師(産婦人科): まず「怖さが強い」と伝えます。必要に応じて、心療内科・精神科などを紹介してもらえることもあります
  • 自治体の保健センター、こども家庭センター(子育て世代包括支援センター): 妊娠中の不安や、産前産後の支援について相談できます
  • 精神保健福祉センター: こころの悩みについて、地域の相談窓口を案内してもらえます
  • カップルカウンセリング・心理の専門家: 「ふたりで怖さを分け合う話し方がわからない」「出産のことでパートナーとすれ違う」といったときの相談先になります

いますぐ助けが必要なとき

「消えてしまいたい」「死んでしまいたい」ほどの気持ちがあるときは、ひとりで抱えないでください。厚生労働省のまもろうよ こころには、電話やSNSで相談できる窓口が載っています。たとえば、よりそいホットライン(0120-279-338、24時間・無料)や、#いのちSOS(0120-061-338、無料)などがあります。電話番号や受付時間は変わることがあるので、掲載元で最新の情報を確認してください。

からだの異変があるとき(出血、強い腹痛、赤ちゃんの動きが少ないなど)は、様子を見ずに、すぐに分娩する施設へ連絡してください。

よくある質問

Q. 初産で出産が怖いのは普通ですか?

普通のことです。初めての出産は、流れも痛みも想像がつかないため、怖さが大きくなりやすいものです。主治医や助産師に流れを聞く、両親学級に参加するなど、「わからないこと」を減らすと、怖さが小さくなることがあります。

Q. 痛みに弱いと、出産はむずかしいですか?

痛みの感じ方は人それぞれで、「弱い・強い」で出産ができるかどうかが決まるわけではありません。痛みが心配なときは、痛みをやわらげる方法を含めて、早めに主治医や助産師に相談してください。

Q. 出産が怖くて死にたくないと思うのは、おかしいですか?

おかしくありません。命を守りたいという自然な気持ちです。日本の妊産婦死亡は、2023年は出産10万件あたり3.1と、かつてに比べて大きく減っています。不安が強いときは、緊急時の体制を主治医に聞いておくと、気持ちが少し落ち着きます。

Q. 出産が怖くて、やめたいと思ってしまうのは、母親失格ですか?

失格ではありません。それだけ真剣に向き合っているからこそ生まれる気持ちです。ひとりで抱えず、主治医や助産師、自治体の窓口に「やめたいほどつらい」と伝えてください。

Q. 夫に出産が怖いと言っても、わかってもらえません。

「励まされるより、聞いてほしい」「怖いことをメモしたから一緒に見てほしい」と、してほしいことを具体的に伝えてみましょう。それでもすれ違うときは、両親学級に一緒に参加する、カップルカウンセリングなどの専門家に相談するという方法もあります。

Q. 出産の怖さは、いつまで続きますか?

個人差があります。出産の日が近づくほど強まる人もいれば、準備が進んで落ち着く人もいます。怖さが日常生活に影響するほど強い、または長く続くときは、早めに医療機関や自治体の窓口に相談してください。

まとめ

出産が怖い気持ちは自然なもので、あなたが弱いからでも、母親に向いていないからでもありません。怖さの中身を分けて考え、準備を進め、ひとりで抱えないことで、少しずつ見通しが立ちます。

  • 出産が怖いのは自然な気持ち。痛み・命の不安・初めて・過去の経験・医療への不安など、中身を分けて考えると準備が見える
  • 主治医・助産師に怖さを伝え、聞くことを書き出し、バースプランや両親学級を活用する
  • パートナーには「聞いてほしい」と具体的に伝え、強い恐怖が続くときや、死にたいほどつらいときは、医療機関・自治体・公的な窓口に相談する

出産が怖くても、あなたはひとりではありません。怖い気持ちごと、まわりの人に預けていきましょう。

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