家事分担の不満がたまる理由と、ふたりで見直す進め方
「私ばかり家事をしている気がする」「毎日ちゃんとやっているのに、わかってもらえない」。家事分担への不満は、小さなことのようでいて、毎日の積み重ねでふたりの気持ちを少しずつ削っていきます。
先に結論をお伝えします。家事分担の不満は、どちらかの性格や努力不足というより、「見えない家事」「頼む手間」「ふつうの基準のちがい」という仕組みから生まれることが多いものです。仕組みなので、家事を見える形にして、担当を決め、落ち着いたときに言い方を工夫して話すことで、やわらげていけます。この記事では、夫婦の家事分担に不満がたまる理由、共働きで起こりやすいこと、名もなき家事の見える化、話し合いの切り出し方、話し合っても変わらないときのことまでを、公的な調査をもとにまとめました。
この記事でわかること
- 家事分担の不満がたまる仕組み(見えない家事・頼む手間・基準のちがい)
- 共働きでも不満が起こりやすい理由と、公的調査でみる実態
- 名もなき家事の見える化と、担当の分け方
- 不満の切り出し方と、そのまま使える言い方の例
- 夫にも不満があるとき、話し合っても変わらないときの考え方と相談先
家事分担の不満がたまる仕組み
家事分担の不満は、「やっている量」だけでなく「気づく・考える・頼む」という見えにくい部分で大きくなります。まず、数字と仕組みの両面から整理します。
夫婦の家事分担、公的調査でみる実態
総務省統計局の令和3(2021)年社会生活基本調査では、6歳未満の子どもがいる夫婦と子どもの世帯で、1日あたりの家事関連時間(家事・買い物・介護看護・育児の合計)は夫が1時間54分、妻が7時間28分でした。2016年と比べると、夫は31分増え、妻は6分減っています(総務省統計局「統計Today No.190」)。変化は起きている一方で、まだ大きな差があります。
内閣府の令和5年版男女共同参画白書では、同じ令和3年の6歳未満の子を持つ夫婦で、家事関連時間のうち妻が担う割合は、妻が無業の場合で84.0%、共働きの場合でも77.4%とされています。
意識の面では、東京都の令和5年度「男性の家事・育児実態調査」では、約8割の男性が家事・育児の分担に満足している一方で、半数以上の女性には不満があるという結果でした。同じ暮らしをしていても、夫と妻で「満足」の感じ方が大きくちがうことがわかります。
不満を感じるあなたが特別にわがままなのではありません。調査でも、同じような差があちこちの家庭で起きています。
名もなき家事とは?見えない家事が不満を大きくする
名もなき家事とは、「ゴミ出し」「洗濯」のように名前のついた家事の前後にある、名前のつきにくい細かな作業のことです。「見えない家事」とも呼ばれます。
たとえば「ゴミ出し」には、家じゅうのゴミ箱を回って集める、分別する、新しい袋をセットする、ゴミ袋の在庫を切らさないようにする、といった作業がついてきます。ゴミ出しの時間だけを見れば「やった」ことになっても、前後の作業をしている人には「全部私がやっている」と感じられます。
ほかにも、次のようなものがあります。
- 献立を考える、冷蔵庫の中身を把握する、買い足すものを覚えておく
- 洗剤や日用品の残りを気にして補充する
- 子どもの持ち物や学校・園のお知らせを確認する
- 家族の予定や行事、季節の衣替えを頭の中で管理する
名もなき家事の大変さは、作業そのものよりも「常に気にかけている」状態が続くことにあります。休んでいるときも頭の中でリストが動いているので、疲れがとれにくくなります。
「頼む手間」と「やっているつもり」の基準のちがい
もうひとつの火種は、「頼まないと動かない」状態です。夫が「言ってくれればやるよ」と言うとき、悪気はなくても、妻には「何をいつ頼むかを考える仕事」がまるごと残ります。家事を頼む側は、作業を考え、依頼し、確認する分だけ負担が増えます。
さらに、「ここまでやれば終わり」の基準は人によってちがいます。お風呂掃除なら、浴槽を洗えば終わりと思う人もいれば、排水口や鏡まで含めて終わりと思う人もいます。どちらも自然な感覚です。基準が言葉にされていないと、「やったのに文句を言われた」「やったことになっていない」という、互いにつらい気持ちが生まれます。
共働きで家事分担の不満が起こりやすい理由
共働きの家庭は、夫婦ともに時間が足りないことが多く、家事分担への不満が表に出やすくなります。共働きだからこそ起こりやすい点を見ていきます。
共働きでも妻の負担が大きくなりやすい
共働き世帯でも、6歳未満の子がいる家庭では家事関連時間の77.4%を妻が担っています(令和3年、内閣府)。仕事と家事・育児の両方を担う妻に、負担が集まりやすい状態です。
帰宅後の「時間の取り合い」で起こること
共働きでは、帰宅後から寝るまでの数時間に、食事・片づけ・入浴・寝かしつけ・翌日の準備が集中します。この時間帯は、ふたりとも疲れていて余裕がありません。余裕がないと、相手がスマートフォンを見ている姿が目に入っただけで、「私は休めていないのに」という気持ちが強くなります。
ここで大事なのは、不満が生まれやすい時間帯に、ふたりで家事の話までしようとしないことです。話し合いは、あとで説明するように、落ち着いた別の時間に行うほうがうまくいきます。
もうひとつ、不満の引き金になりやすいのが、ひとりが家事をしている横で、もうひとりが自分の時間を楽しんでいるように見える場面です。休んでいる側に悪気はなくても、動いている側には「私だけが動いている」と映ります。どちらかが休むのではなく、食後の片づけと入浴の準備を同じ時間帯にそれぞれ進めるなど、ふたりが同時に動く時間をつくると、この感覚はやわらぎやすくなります。休む時間も、先に「何時から自分の時間にする」と決めて交代にすると、お互いに気持ちよく休めます。ふたりで話す時間そのものが減っていると感じる場合は、夫婦で会話がないときの記事も参考にしてください。
家事分担の不満を減らす、見える化と分け方
不満を話す前に、まず家事を見える形にすると、話し合いがぐっと進めやすくなります。ここでは、書き出し方と、分け方の考え方を紹介します。
家事を書き出して「見える化」する
最初の一歩は、家事を全部紙やメモに書き出すことです。名前のついた家事だけでなく、前の項目で触れた名もなき家事も入れます。内閣府男女共同参画局は、夫婦が家事や育児の分担について本音で話し合うためのシート「○○家作戦会議」を公開しています。気持ちの共有、現在と理想の時間の使い方、家事の分担などを書き出して、パートナーと見せ合う形のツールです。
書き出すときのコツは次のとおりです。
- 「料理」ではなく「献立を考える」「買い物リストを作る」「買い物に行く」「作る」「片づける」と、作業の前後まで分けて書く
- 毎日の家事、週1回の家事、季節ごとの家事に分ける
- それぞれにかかる時間と、「気が重い」度合いも書き添える
ふたりが別々に書いてから見比べると、「そんな作業まであったの」「それは家事に入るんだ」という発見が出てきます。相手を責めるためではなく、現状を共有するための作業です。
「最後まで担当する」担当制にする
分け方としておすすめなのは、作業単位ではなく、「始まりから終わりまで」を担当する分け方です。たとえば「ゴミ」を担当する人は、集める、分別する、袋の在庫を管理する、出す、までを全部引き受けます。
担当を決める人が「気づく・考える」も含めて引き受けると、頼む側の負担が減ります。一方で、担当になった人も、自分のやり方で進めやすくなります。決めるときは、次の点を意識してみてください。
- 得意なことや、苦にならないことを優先して選ぶ
- 時間に余裕がある曜日・時間帯に合わせる
- 負担が重い家事を、片方に集めすぎない
- 2〜4週間ためしてから、見直す日を決めておく
最初から完璧な分担を決めなくて大丈夫です。生活は変わるので、「ためして、見直す」を前提にすると、うまくいかなかったときも責め合いになりにくくなります。
「完了」の基準をすりあわせる
担当制にしても、基準のちがいは残ります。そこで、「どこまでできたら完了か」を最初に短く言葉にしておきます。
たとえば「お風呂掃除は、浴槽を洗って、排水口のゴミを捨てるところまで」というように、完了の状態を決めます。細かく決めすぎる必要はありません。大切なのは、「やったのに」と「できていない」のすれ違いを、あらかじめ減らしておくことです。
手放す・やめる・外に頼る
分担だけで解決しないときは、家事の総量を減らす方法もあります。内閣府の作戦会議のシートでも、負担が重い家事は第三者や有料サービスの利用、やめることも選択肢に入れて考えるとされています。
- 毎日やらなくても困らない家事は、頻度を減らす
- 家電や宅配、家事の代行など、使えるものは使う
- 「完璧」を目指さず、「最低限ここまで」を決める
お金や時間を使うことに罪悪感を持つ方もいますが、ふたりの関係を守るための工夫でもあります。
決めたあとは、月に1回ほど、10分だけ「いまの分担でしんどいところはないか」を見直す時間をとると、不満がたまる前に調整できます。子どもの成長や仕事の変化で、ちょうどいい分け方は変わっていくからです。担当の決め方や話し方に迷うときは、夫の育休で担当を決める話し方の記事も参考になります。
家事分担の不満の切り出し方と言い方の例
不満は、言い方しだいで「責められた」と受け取られることがあります。落ち着いたときに、気持ちと事実を分けて伝えると、話し合いが続きやすくなります。
話し合うタイミングと切り出し方
話すタイミングは、疲れている夜や、家事の最中・直後は避けます。休日の落ち着いた時間などに、あらかじめ「家事のことを相談したい」と予告しておくと、相手も身がまえずに済みます。
たとえば、次のように切り出してみる。
- 「責めたいわけじゃなくて、最近ちょっとしんどくて。家事のこと、一度ふたりで整理したいんだけど、今週末に30分もらえる?」
- 「どっちが悪いという話じゃなくて、うちの家事を見える形にしてみたいの。一緒に書き出してくれる?」
「いつも」「全然」「どうせ」といった言葉は、相手が防御的になりやすくなります。代わりに、「最近」「私は」で始めるほうが伝わりやすくなります。
責めずに伝える言い方の例
不満を伝えるときは、「事実」「自分の気持ち」「お願い」の順で話すと、まとまりやすくなります。
たとえば、次のように伝えてみる。
- 「平日の夕飯のあとの片づけを、ほぼ私がやっている日が続いていて、正直、疲れがたまってきた。火・木はお願いできないかな」
- 「ゴミ出しをしてくれて助かってる。ただ、袋の補充までが私に残っているのが、地味に負担で。そこも含めて担当にしてもらえると助かる」
- 「頼むたびに、何をお願いするか考えるのも疲れちゃって。曜日で決めてしまえたら、お互いラクかなと思った」
感謝と依頼を一緒に伝えると、相手は「やっても評価されない」と感じにくくなります。東京都の調査でも、満足度を上げるには男女とも「話し合って協力する」「感謝の気持ちを伝え合う」ことが大切と答えています。
感謝は、依頼の前に添えるとさらに伝わりやすくなります。たとえば「いつも朝のゴミ出しをしてくれて、ありがとう。夜の片づけも一緒に考えてもらえるとうれしい」と、してもらっていることを具体的に言葉にしてから、お願いを続けてみる。当たり前になっていることほど、言葉にされると「見てもらえている」と感じられ、次のお願いも受け取りやすくなります。感謝は、相手への気づかいであると同時に、自分も「やってもらっていること」に目を向けるきっかけになります。
夫の側が不満を言われたとき
夫の立場では、「やっているのに文句を言われた」と感じることもあると思います。そのときは、反論する前に、「具体的にどの部分がしんどい?」と聞いてみてください。量の話ではなく、見えない家事や頼む手間の話だったとわかることがよくあります。「自分の分はやっているのに」という気持ちが出たときも、それは自然な反応です。ただ、いったん聞くことに徹したほうが、あとで自分の言い分も伝えやすくなります。
家事分担の不満が夫にもあるとき
家事分担の不満を持つのは、妻だけとは限りません。夫にも不満がある場合は、お互いの言い分を出し合うところから始めます。
夫の不満にも耳を傾ける
夫の側にも、「長時間働いて疲れているのに、休む時間がない」「やると決めていた家事を、やり方がちがうと言われて直された」「感謝されないと感じる」といった不満が出ることがあります。どれも、その人にとっては本当の気持ちです。
どちらの不満が正しいかを決める必要はありません。ふたりの気持ちを並べて、「家庭全体の負担を、どう減らすか」という共通の課題に変えていくのが目標です。
「負担の量」より「納得感」を話す
家事の分け方は、時間を半分にすれば正解というものではありません。仕事の時間帯、体力、子どもの年齢、通勤時間などによって、ちょうどいい分け方は家庭ごとにちがいます。大切なのは、数字がぴったり同じかどうかよりも、ふたりとも「だいたい納得できる」と感じられることです。
話し合っても家事分担の不満が変わらないとき
話し合っても変わらないと、「もう無理かも」と感じてしまいます。そんなときの考え方と、相談先を整理します。
まず「頻度」と「進め方」を見直す
変わらないときは、一度に全部変えようとしていないかを見直してみてください。ひとつの家事だけ、1か月だけ担当を替えてみるなど、小さく始めたほうが続きます。また、約束しても忘れてしまう場合は、予定表やメモなど、見える場所に担当を貼っておくのも助けになります。
ひとりで抱えているときにできること
不満が強いときは、心や体の疲れも限界に近づいていることがあります。眠れない日が続く、何をしても気分が晴れない、涙が止まらないといった状態が続くときは、家事の話の前に、まず自分を休ませることを優先してください。気になるときは、かかりつけの医療機関や心療内科・精神科、お住まいの自治体の相談窓口に相談してみましょう。
相談先を頼る
ふたりで話すと感情的になってしまうときは、第三者に入ってもらう方法があります。
- 自治体の男女共同参画センター(家庭や子育てなどの相談を受けているところがあります)
- お住まいの市区町村の保健センター・こども家庭センターなどの窓口(子育て中の方)
- カップルカウンセリングや、心理の専門家によるオンライン相談
話し合いの中で、大声で責められる、人格を否定される、生活費を渡してもらえない、家事を強制されるなどの状態があるときは、「ふたりで話し合う」より、あなたの安全を優先してください。DV相談ナビ(#8008)に電話すると、お近くの配偶者暴力相談支援センターなどにつながります。
よくある質問
家事分担の不満について、よく聞かれる疑問に答えます。
Q. 家事分担への不満は、私のわがままでしょうか?
わがままではありません。令和3年の社会生活基本調査でも、6歳未満の子がいる夫婦で、家事関連時間は妻のほうが大きく上回っています。気持ちが苦しいのは、その偏りを毎日受け止めているからかもしれません。まずは「しんどい」と感じる自分の気持ちを認めてあげてください。
Q. 共働きで同じ時間働いているのに、なぜ家事は私ばかりなのですか?
共働きでも、家事関連時間の77.4%を妻が担っているという調査があります(令和3年、6歳未満の子がいる夫婦)。働く時間が同じでも、見えない家事や、子どもに関する細かな管理が片方に集まりやすいためです。書き出して見える化すると、どこに偏りがあるかが見えてきます。
Q. 夫が「言ってくれればやる」と言います。どう返せばいいですか?
「頼まないと動かない」状態は、頼む側に大きな負担が残ります。たとえば「頼むのを考えるところから一緒に担ってほしいから、曜日で担当を決めたい」と伝えてみる。気づく・考えるところまで含めて担当にしてもらうよう、提案してみてください。
Q. 名もなき家事は、どうやって分ければいいですか?
まず書き出して、ふたりで共有します。そのうえで、「作業」ではなく「ゴミ」「日用品」「子どもの持ち物」のように、まとまりごとに担当を決めると分けやすくなります。減らせるもの(頻度を下げる、やめる)も一緒に探してみてください。
Q. 家電や家事の代行に頼るのは、手抜きですか?
手抜きではありません。内閣府の作戦会議のシートでも、負担が重い家事は、第三者や有料サービスの利用、やめることも選択肢に入れるとされています。ふたりの時間と気持ちに余裕を作るための工夫です。
Q. 家事分担の不満で、離婚を考えてしまいます。
家事のことで繰り返しぶつかると、そう考えてしまう方もいます。ただ、家事分担の不満は、見える化・担当制・話し方の工夫で変わる余地があることも多いものです。決断を急がず、まず第三者に気持ちを聞いてもらいましょう。安全が脅かされているときは、前の項目の窓口に相談してください。
まとめ
家事分担の不満は、あなたのわがままでも、パートナーの怠けでもなく、見えない家事・頼む手間・基準のちがいから生まれることが多いものです。
- 家事分担の不満は、総務省・内閣府の調査でもわかるように、多くの夫婦に起こる偏りがもとになっている
- 名もなき家事まで書き出して見える化し、「最後まで担当する」担当制にして、ためして見直す
- 切り出すときは落ち着いた時間に、事実・気持ち・お願いの順で。変わらないときは、ひとりで抱えず第三者に相談する
家事は、ふたりの暮らしを支える共同作業です。小さく見直すところから、始めてみてください。