子育ての方針が夫婦で違うとき 話し合いの進め方と相談先
子育ての方針が夫婦で違うと、「どうしてわかってくれないの」「自分だけが責められている」と、子どものことなのに、ふたりの間がぎくしゃくしてしまいますよね。
先に結論をお伝えします。子育ての方針が夫婦で違うのは自然なことで、「そろえる」より「目的をそろえて、役割を分ける」ほうがうまくいきやすいです。ただし、体罰だけは「方針の違い」にはなりません。この記事では、違いが生まれる理由、ぶつかりやすい場面、話し合いの進め方、まとまらないときの相談先をまとめます。
この記事でわかること
- 子育ての方針が夫婦で違うのは、なぜ自然なことなのか
- しつけ・スクリーンタイム・習いごとなど、ぶつかりやすい場面の整理のしかた
- 育児方針の話し合いの進め方と、そのまま使える言い方の例
- 子どもの前で方針が食い違ったときの対応
- どうしてもまとまらないときの相談先
子育ての方針が夫婦で違うのは自然なこと
方針の違いは、どちらかが間違っているから起きるわけではありません。まずは「違って当たり前」というところから始めましょう。
育ってきた家庭がちがう
夫婦はそれぞれ、別の家庭で育っています。厳しい家庭で育った人もいれば、のびのび育った人もいます。「自分が親にされたこと」は、よくも悪くも、子育ての基準になりやすいものです。
「自分はこうして育ったから大丈夫」と思う人と、「自分はこれがつらかったから、子どもにはしたくない」と思う人が並ぶと、同じ場面でも反応が変わります。どちらも子どもを思う気持ちから出ていることが多いです。
情報源と不安の大きさがちがう
読んでいる本、見ているSNS、周りの人の話によって、「正解」のイメージは変わります。また、不安の感じ方にも差があります。
たとえば、片方は「今のうちに習いごとをさせないと」と焦り、もう片方は「今は遊ぶ時期」と考えている、といったことが起こります。日々の子どもの様子を見ている時間の長さが違うと、気づく心配ごとの量も変わります。
子育ての価値観が合わないと感じたときの見かた
価値観が合わないと感じると、「この人とやっていけるのかな」と不安になります。でも、子育ての方針の違いと、夫婦としての相性の問題は、分けて考えたほうがよいことが多いです。
方針の違いは、多くの場合、「何を大事にするか」の優先順位の違いです。どちらも大事にしたいことが、たまたま別の場所にあるだけ、ということもあります。違いを「相手の欠点」ではなく「大事にしているものの違い」として見ると、話し合いの入り口が見つかります。
しつけや方針の違いでぶつかりやすい場面
ぶつかりやすいテーマは、ある程度決まっています。あらかじめ「うちはここが違いやすいな」と知っておくと、気持ちに余裕が持てます。
しつけ・叱り方で夫婦の意見が違うとき
しつけや叱り方で夫婦の意見が違うのは、特に多い悩みです。厳しく叱るべきか、見守るべきか。どこまで許すか。叱り方の強さやタイミングで、衝突しやすくなります。
ここで、はっきりお伝えしておきたいことがあります。厚生労働省とこども家庭庁が出している「体罰等によらない子育てのために」では、2019年6月に成立した児童福祉法等の改正で、体罰が許されないことが法律に定められ、2020年4月1日に施行された、と説明されています。親がしつけのつもりでも、子どもの身体に苦痛や不快感を意図的に与える行為は、どんなに軽いものでも体罰にあたるとされています。
つまり、体罰は「夫婦の方針の違い」で選べる選択肢ではありません。「うちは叩くしつけ」「うちは叩かないしつけ」という並べ方はできない、ということです。同じ資料では、怒鳴りつけることや、子どもの存在を否定するような言葉も、子どもの成長・発達に悪影響を与える可能性があるとされています。
そのうえで、叱る場面での違いは、たとえば次のようなところに絞って話し合えます。
- 叱るタイミング(その場ですぐか、落ち着いてからか)
- 伝え方(理由を説明するか、短く止めるか)
- 何を叱って何を見守るか(危ないこと・人を傷つけることは止める、など)
スクリーンタイム・食事・寝る時間
動画やゲームの時間、お菓子の量、野菜を残したときの対応、寝る時間。毎日のことだからこそ、小さな違いが積み重なって、大きなストレスになります。
こうした場面では「正しいか間違いか」より、「家のルールとして何を決めるか」を話し合う項目だと考えると、ぐっと楽になります。
習いごと・教育方針・受験
教育方針が夫婦で違うという悩みは、習いごとや受験の話題で表に出やすくなります。いつから始めるか、どこまで頑張らせるか、どんな進路を考えるか。ここには、それぞれの経験や将来への不安が強く反映されます。
この領域は、すぐに結論を出す必要がないことも多いです。時間をかけて、少しずつ確かめながら進められる点も、頭に置いておいてください。
育児方針の話し合いの進め方
育児方針の話し合いは、ただ向き合って話せばよい、というものではありません。順番を決めると、感情的になりにくくなります。
1. 目的をそろえる
最初に、「子どもにどう育ってほしいか」「いま何を一番大事にしたいか」を確かめます。やり方は違っても、目的が近ければ、折り合える部分が見つかります。
たとえば、こんな言い方で切り出してみる方法があります。
- 「やり方は違うかもしれないけれど、この子に安心して過ごしてほしいという気持ちは同じだよね」
- 「どうしたいかの前に、どうなってほしいかをお互いに話してみない?」
2. 譲れないことと、任せられることを分ける
すべてを同じ基準にそろえようとすると、疲れてしまいます。次の3つに分けると整理しやすくなります。
- ふたりとも譲れないこと(安全、体罰や暴言をしない、など)
- どちらかに任せてよいこと(寝かしつけの方法、食事の担当など)
- もう少し様子を見て決めること(習いごと、進路など)
「任せる」と決めたことには、口を出さないのも大切なルールです。やり方が自分と違っても、子どもに危険がなければ、相手のやり方を認める姿勢が助けになります。
3. 責めずに、気持ちを伝える
話し合いの場では、「あなたはいつも〜」と相手の人格を責める言い方より、「私は〜と感じた」と自分の気持ちを伝える言い方のほうが、相手が受け止めやすくなります。
ふたりで話すときの言い方の例です。
- 「責めたいわけじゃなくて、私はこの場面が少し不安だったんだ」
- 「どうしてそう思うのか、教えてもらってもいい?」
- 「そのやり方も一理あるね。私が気になったのはここなんだ」
- 「今日は決めなくていいから、まず考えを聞かせてほしい」
4. 話すタイミングを選ぶ
子どもがいる場や、疲れている夜遅くは、話し合いに向きません。子どもが寝たあとや、休日の落ち着いた時間に、短い時間で区切って話すのが一つの方法です。
一度で決めようとせず、「今日はここまで。続きは来週」と区切るのも立派な進め方です。
子どもの前で方針が食い違ったときの対応
方針の違いは、子どもの目の前で表に出ることもあります。ここでは、言い合いにせず、子どもが迷わないようにするための対応を整理します。
相手の決めたことを、その場でくつがえさない
片方が「今日はおやつはおしまい」と言ったあとに、もう片方が「少しならいいよ」と言うと、子どもはどちらに従えばよいのか迷います。その場では、先に伝えたほうの決定に合わせておき、違う考えがあるときは、子どもがいないところで話すと決めておくと安心です。
- その場では「ママ(パパ)がそう言ったから、今日はそうしよう」と、いったん合わせる
- 違う考えは、子どもが寝たあとなどに「さっきの場面、私はこう考えていたんだ」と伝える
- 次からどうするかを、ふたりで決めておく
「パパはいいって言った」と使い分けられたとき
子どもが成長すると、許してくれそうなほうに頼みに行くことがあります。これは子どもが悪いのではなく、ふたりのルールの違いに気づいている、というサインです。
- 「パパ(ママ)にも聞いてから決めるね」と、ひとりで即答しない
- よく使い分けが起きるテーマは、あらかじめ「うちのルール」として決めておく
- 決めたルールは、子どもにもわかる言葉で伝える
ルールが違っても、子どもに理由を伝える
祖父母の家や、パパと過ごすとき・ママと過ごすときで、多少ルールが違うこと自体はよくあることです。違いをなくすより、「おうちでは〜にしているよ。理由はね」と、理由とセットで伝えるほうが、子どもは納得しやすくなります。
言い合いになってしまったら
それでも子どもの前で言い合いになってしまったときは、いったん「あとで話そう」と区切ります。子どもへのくわしいフォローや、夫婦の不仲が子どもに与える影響については、専門家の解説や自治体の子育て相談も参考にしてください。
暴力や強い恐怖がある場合は、話し合いより安全を優先
パートナーから暴力を振るわれる、怒鳴られて怖い、子どもが怯えている、という場合は、「話し合ってわかり合う」より、まず安全を守ることが大切です。内閣府の「DV相談ナビ」(電話 #8008)は、お近くの相談窓口につないでくれます。DV相談プラスではチャットでも相談できます。詳しくは内閣府男女共同参画局の配偶者からの暴力被害者支援情報をご覧ください。
子どもへの虐待かもしれないと感じたときは、児童相談所虐待対応ダイヤル「189」(24時間、通話無料)に電話できます。匿名で相談でき、相談した人や内容の秘密は守られるとされています。
どうしてもまとまらないとき
話し合っても平行線で、同じことでぶつかり続けるときは、ふたりだけで抱え込まなくて大丈夫です。
家族や身近な人に頼る前に
祖父母や友人に相談すると、味方になってくれる反面、「どちらが正しいか」の話になり、かえってこじれることもあります。相談するときは、「相手を責める材料を集める」のではなく、「整理を手伝ってもらう」くらいの気持ちで話すと安心です。
自治体の子育て相談
お住まいの市区町村には、「こども家庭センター」があります。こども家庭庁の説明では、市区町村の母子保健と児童福祉の機能が一体となり、妊産婦や子育て家庭、こどもからの相談に応じる窓口です。保健師などの専門職に、子育ての悩みを話せます。設置の名称や場所、受付時間は自治体ごとに違うため、市区町村の公式サイトでご確認ください。
「体罰等によらない子育てのために」でも、相談は「まずはお住まいの市区町村の子育て相談窓口へ」と案内されています。詳しくはこども家庭庁の「こども家庭センター」のページをご覧ください。
カップルカウンセリング・心理の専門家
方針の違いの背景に、お互いの不安や、話し合いがうまくいかないパターンがあるときは、カップルカウンセリングや心理の専門家に相談する方法もあります。第三者が間に入ることで、言い方のくせに気づけたり、相手の本音を落ち着いて聞けたりすることがあります。
方針が合わないことだけで、ふたりの関係の先まで決めつけなくて大丈夫です。つらさが続くときは、早めに誰かに相談してください。
ひとりで相談してもかまいません。どちらかが疲れ切っている、気持ちが落ち込んで眠れない・食べられない状態が続く、という場合は、産婦人科・心療内科・精神科などの医療機関や、自治体の窓口にもご相談ください。父親も産後に気持ちが沈むことがあります。気になるときは男性の産後うつの記事も参考にしてください。
いますぐ助けが必要なとき
「消えてしまいたい」「このままではつらすぎる」と感じるほど追い詰められているときは、ひとりで耐えないでください。厚生労働省の「まもろうよ こころ」のページから、電話やSNSの相談窓口を探せます。命の危険が迫っているときは、119番や110番へ。
よくある質問
Q. 夫婦で子育ての方針が違うのは、おかしいことですか?
おかしくありません。育ってきた家庭、情報源、不安の大きさが違えば、方針が違うのは自然です。大切なのは、違いをなくすことより、目的をそろえて、話し合いの進め方と役割分担を決めることです。
Q. 教育方針が夫婦で違うとき、どちらに合わせるべきですか?
どちらかに合わせる、と決めなくてかまいません。子どもの年齢や状況に応じて「今はこの方針で試してみよう」と期間を決め、様子を見て見直す方法があります。受験や習いごとのように時間をかけて決められることは、焦って結論を出さないのも一つの考え方です。
Q. 夫(妻)が厳しすぎて、しつけの方針が合いません。どうすればいいですか?
まず、叩く、物を投げる、存在を否定する言葉を使う、といった体罰や暴言は、話し合いの余地がないことです。体罰は法律で禁止されています。それ以外の「叱る強さ」や「ルールの厳しさ」は、子どもの年齢に合わせて、ふたりで基準を話し合ってみてください。体罰や暴言がある場合は、児童相談所の「189」や自治体の窓口に相談できます。
Q. 子どもの前で、相手の叱り方に口を出してもいいですか?
体罰や暴言でなければ、その場では口を出さず、あとで子どもがいないところで話すほうがよいことが多いです。その場で反対すると、子どもはどちらの言うことを聞けばよいか迷ってしまいます。ただし、子どもに危険がある場合や、体罰・暴言がある場合は、その場で止めてかまいません。
Q. 話し合っても、相手が聞いてくれません。
方針の違いの話に、家事・育児の分担への不満が混ざっていることは少なくありません。「やり方が違う」と言いたいのに、実は「ひとりで負担している」ことがつらい、という場合です。まず「方針」と「分担」を分けて、どちらの話をしたいのかを伝えると、聞いてもらいやすくなります。
話す時間帯や言い方を変えてみるのも一つの方法です。それでも難しいときは、第三者に間に入ってもらう方法があります。自治体の子育て相談や、カップルカウンセリング・心理の専門家に相談できます。
Q. 祖父母と子育て方針が違う場合はどうすればいいですか?
夫婦の間で「譲れないこと」を先に決めておき、祖父母には夫婦そろって、短く具体的に伝えると誤解が少なくなります。「お願いごと」と「ありがたいと思っていること」をセットで伝えると、角が立ちにくいです。
まとめ
子育ての方針が夫婦で違うときの、大事なポイントをまとめます。
- 方針の違いは自然なこと。「そろえる」より「目的をそろえて、譲れないことと任せられることを分ける」
- 体罰は方針の違いではなく、法律で禁止されている。叱り方は、体罰や暴言を除いたうえで話し合う
- まとまらないときは、自治体の子育て相談やカップルカウンセリング・心理の専門家など、第三者の力を借りてよい
子育ての方針が違うことは、ふたりがそれぞれ子どもを思っている証でもあります。ひとりで抱え込まず、少しずつ、ふたりのやり方を見つけていきましょう。